2014年5月31日土曜日

お疲れスターパンダ

「考え過ぎは良くない」
そんなくだらん俗説にピリオドを打つような出来事があった。
答えの無い事でも考えに考え抜けば答えが出る。
そう実感した。
初めて自転車の補助輪を外した時みたいに爽快な気分だ。

何週間か前、僕は終電車を間違えた。
一滴も酒を飲んでない状態で見事に間違えた。
やべえ、間違えた!とサンタクロースぐらいあわてて下車した所は北府中という童貞駅(初めて降りた駅)
まあ、大都市大都会東京だ。東京となれば深夜でもなんとでもなるさ。なんてうつつ抜かしていたら、目の前にはTOSHIBAの本社がでっかく鎮座していて、それ以外に何にもない。
餅屋に餅しかねぇ!みたいな精神状態でとりあえず練り歩く。
将棋の最中に飛車をとられたような悲哀と闘いながらなんとかコンビニを一軒見つけたがやはり何もない。
なんかちょうどタクシーが走ってきたから手をあげてみたら止まってくれた。
なのでとりあえず、自宅の方向までお願いした。
なんか遠いなーって思ってたらタクシーのメーターがすでに五千円を超えていて、しかも家までまだまだ距離がある。
そこでシダックスが見えたからなんとなく降りてしまった。
後から考えてみれば、カラオケに泊まる金と残りの距離のタクシー代、あんまり変わらないんじゃないかという説もある。
とりあえずシダックスに入って適当に歌謡曲を歌って、なんかつまんねーなと思って二時間くらい寝た。
隣の部屋から般若の『やっちゃった』が聴こえてきて目が覚めた。(幸い、靴下を履いたまま裸ではなかった)
始発を待つために東村山駅まで歩く。近い。

目下、朝方まで飲んでいたと推測できるテニスかなんかのサークルの大学生が歩いてきた。
みんなジャージ姿でラケットバックを背負っていた。
眼鏡の奴がどうやら電車に乗らず歩いて帰るみたいで、他の連中に別れを告げていた。
「お疲れスターパンダ!」
「お疲れスターパンダ!」
彼らの中で通例の挨拶なのだろうが、終電車を間違えて朝帰りになってしまった僕にはえらく染みた。
かさぶたを剥いで塩を振りかけるみたいに染みた。

それから数週間、僕は「お疲れスターパンダ」について、仕事中も入浴中も明晰夢を見ている間もずっと考え込んでいた。
「お疲れスターパンダ」とはいったいなんだったのか。

こういう時に何か明確なきっかけ、金田一少年が犯人に確信を持てるようなきっかけがあればいいんだろうけど、答えは前触れなく突然降ってきた。
「お疲れスターパンダ」がバラバラに散らばって、あれよという間に再構築されたのだ。

「あー、そっか。お疲レッサーパンダって言ってたんだ」

思わず独り言を漏らす程の衝撃だった。